産学官民連携部会MANGO 3月例会レポート

2019.3.28

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量子力学とレーザーの世界へ

 

産学官民連携部会MANGO(以下、MANGO)は、「10年間で100のプロジェクトを産み出し 1000人の雇用を実現する!」をスローガンに、宮崎県中小企業家同友会(以下、同友会)の部会として2012年に誕生した。同友会の例会は、会員が自身の経営体験を報告し、その話を題材にグループ討論を行い、それぞれの解釈や考えの違いの中から学び合うという一連の流れがあるが、MANGOの例会では「経営体験」ではなく、自身のビジネスや事業計画について報告者にプレゼンテーションをしていただき、その事業における課題や新たなアイデアを参加者が自由に出し合うといった内容であった。同友会では、社長自身の経営姿勢や考え、あるいは経営そのものについて学び合う機会は多いが、ビジネスやこれから取り組もうとしている具体的な事業計画について話をしたり、意見を求めたりする機会はほとんどなかったため、このMANGOの例会は当時は斬新な取り組みであったと言える。しかし、事業について有意義なアドバイスをするには各分野の専門性の高い知識が必要であること(そのためにはある程度の人数も必要)、新たな事業に取り組んでいるといった事例がさほど多くないこと、また同友会内の機運が醸成されていなかったこと等の理由だと思われるが、次第に例会の参加者が減少していったため、三年ほど前から例会の在り方を見直していく作業を行なった。具体的には、ビジネスや事業そのものだけではなく、こだわりや信念、または面白く感じたこと等々、幅広い視点でお話ししていただくこと。そして、課題の抽出や否定的な意見を求めるのではなく、応援や共感をベースに意見交換をすること。この取り組みが功を成し、最近の例会は常に会場の収容人数いっぱいの人が参加するようになっている。敷居が低くオープンな雰囲気を目指しているため、毎回初参加の人が何人か参加している状況にもなっている。

 

そんなMANGOが立ち上がる前の構想段階から関わっていただき、現在も運営委員長を務めていただいているのが、国立大学法人宮崎大学の准教授であり、産学・地域連携センター副センター長の甲藤正人氏である。MANGOが7年間も活動を継続してこれたのも、甲藤氏のご尽力があったからこそであるが、実は何を生業にしているのか、関係者もほとんど知らないが現状。そこで今回の例会は、甲藤氏の職場及び研究内容の紹介をしていただくことになった。

 

国立大学法人宮崎大学
産学・地域連携センター機器分析支援部門

 

まず最初に宮崎大学の北西の端にある産学・地域連携センターに集合した。ここから南東に位置する機器分析支援部門がある建物へと徒歩で移動するが、大学の広大な敷地をほぼ対角線上の反対側へ歩くことになるため、約1km程の道のりだ。時間帯や時期の関係もあり大学生はほとんどいなかったが、普段あまりゆっくりと見ることのない大学の様子を見ながら歩くのも良いものだ。

 

機器分析支援部門に到着すると、担当の境先生に案内され、建物内の様々な分析機器を見学することになった。レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置、核磁気共鳴装置、走査電子顕微鏡、X線光電子分光装置等々の機器の説明を受けるが、かなり専門性が高く、研究者ではない一般の人にはなかなか理解が難しい内容だ。原子や分子のスケール、つまり目に見えないナノメートルの領域で分析、観察することができたり、材料表面の原子結合状態を調べることができたり…等のような説明をしていただいたが、研究者や専門家でない限り、普段ほとんど踏み入れない世界だ。機器はそれぞれ数千万円から数億円とかなり高価であり、維持するだけでも費用はかなりの負担となるため、学内での使用においても使用料を徴収しているとのこと。また、維持費や研究費を捻出することもあるが、地域への貢献を目的として、これらの分析機器の利用や受託試験を学外からも積極的に受け付けている。興味がある方は産学・地域連携センター機器分析支援部門へ問い合わせてほしい。

 

機器分析支援業務(事務室)
TEL&FAX:0985-58-2868

 

機器分析支援部門の見学を終えると、農学部の牛や山羊を見ながら産学・地域連携センターに戻り、同会の運営委員会を開催。次回の例会や総会、その他の企画について協議や決議をした。一時間程度の運営委員会を経て、いよいよ謎多き甲藤氏の特別セミナーが始まった。「量子力学とレーザー入門」と題して、日々の研究の基礎中の基礎をお話ししていただくことになっているが、はたしてどの程度理解できるであろうか… 少々不安な空気の中で始まったセミナーだが、専門分野の学生でも研究者でもない人間が理解できないのは当然。しかし、甲藤氏のわかりやすい説明で、ほんの少しだけ「概念」に触れることはできたような気がする。量子力学とはニュートン力学やマクスウエル電磁気学のような古典論では説明できないミクロの物理学であること、アインシュタインの光量子仮説、ボーアの量子論、水素原子の電子の軌道、思考実験「シュレディンガーの猫」…

 

話が進むにつれて、参加者の頭の上にハテナマークが浮遊しているのが見えるようだったが、知的好奇心を刺激される非常に面白いお話だったことは間違いない。

 

セミナーの後は質問が絶えなかったが、懇親会の時間が迫っていたので場所を宮崎市内の歓楽街へ移し、見学や講話の余韻に浸りながら大いに交流した。MANGOでは例会後に必ず交流会を開催することを約束事として決めており、その名のとおり産学官それぞれの立場の人と熱く本音を語り合い、さらに学びを深めていけるのが魅力だ。

 

 

次回のMANGO 4月例会は空手道場である正道会館宮崎支部を運営する株式会社OSC代表取締役の大矢秀二氏、そして防災関連プロジェクトを仲間と共に立ち上げた株式会社ポップミックス代表取締役の山口和子氏にお話していただく(2019年4月24日開催予定)。

 

講師プロフィール:

 

国立大学法人 宮崎大学
産学・地域連携センター 准教授
甲藤 正人氏

 

1965年、大阪府茨木市生まれ。94年に大阪府立大学工学研究科博士後期課程修了後、近畿大学理工学部の助手に、99年には同講師を務める。2003年に宮崎大学地域共同センター(当時)の助教授に就任し、現在に至る。大学での産学連携事業に関わるセンターにおいて、副センター長として企画・運営に携わると共に、研究者としても活動している。研究における専門分野は量子エレクトロニクス,光エネルギー応用工学である。主に真空紫外領域を中心として,短波長・短パルスレーザーの開発と,光・レーザーの応用技術に関する研究、ならびに光エネルギーの高効率変換技術とその有効利用について研究に従事している。短波長の発生を中心とした光・光変換技術を通して新しい光科学の世界を拓くと共に、加工や計測などの光の産業応用技術にも注力している。


 

本資料は同友会の会員がゲストや非会員を訪問したり、入会や例会参加をお誘いする際に活用していただくために試験的に増強本部が発行しています。PDFファイルをダウンロードできますので、印刷する等としてご活用ください。

 

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文・構成・撮影:
竹原 英男
TNAソリューションデザイン株式会社 代表取締役
宮崎北支部・理事・増強本部長・産学官民連携部会MANGO会長