シャロン 感謝とお別れの食事会

2019.3.29

 

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惜しまれながら名店シャロンが閉店

 

宮崎港近くの鉄板焼ステーキ、しゃぶしゃぶ、グリルレストランのシャロンは、宮崎県内において知らない人がいないくらいの有名店。宮崎港までの目印のような存在でもあり、日頃のランチやディナーはもちろんのこと、ちょっとしたお祝い事には「シャロン」という人も少なくない。そんなずっとそこにあるのが「当たり前」であるかのように存在したシャロンが、2019年3月30日を以って惜しまれながら閉店することになった。

 

宮崎の一時代を築いた名店へ

 

シャロンは開店から41年目を迎える。オープンした1978年は、日本が高度成長期を終え、安定成長期を迎えた時代であり、時代劇「暴れん坊将軍」や音楽番組「ザ・ベストテン」の放送が開始された年。長い歴史を持つ宮崎のシャロンだが、その歴史は決して平坦なものではなかった。2001年、大阪府東大阪市に本社を置く当時の運営会社は、関西や九州に約50店舗を展開していたが、資金繰りが滞り、債権者の整理回収機構(RCC)が会社更生法適用を申請。負債総額は約千百五十億円に上り、採算性の低い店は閉鎖されていった。そのような状況の中、宮崎店は運営次第で収益を見込めることから営業を継続。その後、更生管財人は元従業員に独立採算制による店舗運営を打診。2003年、福岡地区の責任者だった調(しらべ)さんらは、宮崎店を運営する有限会社を設立した。当時の新聞には、「社名は客、従業員、業者らが家族のように仲良く幸せになる願いを込めて、フランス語のメナージュ(家族)から「皆寿(みなーじゅ)」と名付けた」と報道されている。

 

こうして16年前に再スタートを切ったシャロンだが、その直後に社長の調さんは宮崎県中小企業家同友会(以下、同友会)に入会。宮崎北支部の支部幹事を務める等、経営者仲間と共に学び合った。調さん自身が惚れ込んだ「宮崎牛」を主力として「宮崎の人々を愛し、愛される店にしたい」とメニュー開発や店舗運営に努め、後継者育成にも挑戦したが、残念ながら2019年3月に閉店することを決意するに至ることになった。

 

感謝とお別れの食事会

 

閉店を間近に控えた3月15日の夜、同友会の仲間が集い、「感謝とお別れの食事会」を開催した。宮崎牛のしゃぶしゃぶに舌鼓を打ちながら、シャロンの想い出を語り合い、それぞれが調社長に言葉を贈った。

 

「幼い頃、レジ横のオモチャが欲しくて、シャロンに連れてきてもらうのが楽しみだった」、「宮崎に帰省した時、一番最初に連れてきてもらったのがシャロンだったが、お金がなかったので定食を食べた」、そんな想い出を皆が懐かしそうに語ってくれた。私自身にもいくつかの想い出があり、アメリカから帰ってきたばかりの頃、当時の妻と一緒に鉄板焼きでデートしたり、子供の卒園式には三世代揃って食事に来たり、会社の設立記念日に社員と共に食事会を開いたりした。同友会に入会して半年足らずの人も参加していて、「会社が近くで、社員と一緒に唐揚げ食べ放題をいつも食べに来ていた」と話してくれた。個人的に共感したのは、鉱脈者の川口社長の言葉だ。「みんな、綺麗事ばかり言っているが、俺はそうじゃない。妻や子供、家族に問題があった時、そんな時こそシャロンでご馳走を食べて、状況を打開しようとしていたものだ」。確かにそうかもしれない。楽しい時も、悲しい時も、困った時も、いろんな想いを受け止めてくれるお店、それがシャロンだった。

 

 

 

 

ありがとうシャロン
ありがとう調さん

 

そんなお店を作ってくれた調さんは、スラッとしていてネクタイがとても似合い、まさに「ダンディー」という言葉がぴったりの紳士だ。彼は静かに語ってくれた。「もう仕事は引退しているが、毎日シャロンでランチを食べるために起きて、外に出かけるという常連さんがいる。いろんな人たちがシャロンに想いを馳せてくれている。そんな中で閉店をすることに、申し訳ない気持ちでいる」と。本当にお客様を愛して、お客様に愛されてきたお店なんだなと聞いてる誰もが感じたはずだ。その一方で、調さん自身は、これからの人生にワクワクしているとも語ってくれた。

社名の「皆寿(みなーじゅ)」の裏の本当の意味も語ってくれたが、それは私たち参加者だけの秘密にしておくことにする。

 

 

少子高齢化、人口減少、縮小経済、これからの日本が迎える現実の中、地方の経営者にとって後継者育成や事業承継は最も大きな課題であることは間違いない。従業員不足や後継者不在による閉店や廃業も最近はあちらこちらで耳にする。そのような中、宮崎市民にとってシャロンの閉店は、より一層にショックだと感じる人は少なくないだろう。しかし、ただでさえ新陳代謝の激しい飲食業界の中で、これだけ惜しまれて閉店するお店がどれだけあるだろうか。多くの想い出を残し、一時代を築いてくれたシャロン。調社長と従業員の皆さんに感謝して、今は静かに閉店を見届け、第二の人生を歩みだした調さんのこれからの人生にエールを贈りたい。

 

そしてなにより、この日集まった同友会の仲間の言葉にある通り、これまで地域に根ざし、地域に愛される経営を実践してきた調さんとの学び合いを胸に、これからも私たちは学びを続けていかなければならない。

 


本資料は同友会の会員がゲストや非会員を訪問したり、入会や例会参加をお誘いする際に活用していただくために試験的に増強本部が発行しています。PDFファイルをダウンロードできますので、印刷する等としてご活用ください。

 

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文・構成・撮影:
竹原 英男
TNAソリューションデザイン株式会社 代表取締役
宮崎北支部・理事・増強本部長・産学官民連携部会MANGO会長