先を見据えた戦略的経営/有限会社サンエク 白川 良一氏

2019.4.4

宮崎北支部3月例会レポート
開催日時: 2019年3月22日(金) 18:30~21:30
開催場所: 宮崎市民プラザ4階大会議室

 

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有限会社サンエク
代表取締役白川 良一氏

 

エクステリア設計・施工
1999年創業/社員数21名(うちパートアルバイト2名)

 

宮崎県中小企業家同友会(以下、同友会)の例会において、有限会社サンエクの白川氏は何度も経営体験報告者に選ばれている。それだけ白川氏の経営体験に学ぶことがあると多くの人が感じているのだろう。この日の例会は、白川氏にとって初めてのスライドを投影して進める報告となった。挨拶もそこそこに、例会のタイトルである「10年後、我が社は生き残る」を否定することから始まった。

 

このタイトルには違和感を感じます。なぜならば、今年新卒で入社した社員が定年退職を迎える45年先までしっかり生き残ることが経営者の責任だからです。

 

優しく温和そうに感じる外観からは意外に感じるかもしれないが、白川氏はかなりの戦略家であり、人一倍の野心や信念を感じる方だ。これまで長く付き合ってきた私は「いきなり白川節が出たか」と思わずほくそ笑んだ。

 

第一章は「我が社のあゆみ」と題して白川氏の経歴、会社の歴史を話してくれた。23歳の時にえびの市役所に入所、全国自治団体職員労働組合の書記長や全日本労働総同盟の公務員部長等を経験し、39歳の時に市役所を退職。1999年、44歳の時に創業している。妻と二人で小旅行気分で遠征した話等、様々な経験を話してくれたが、印象に残るのは2005年の台風14号で被災したことだ。2トンダンプ2台を含む車両6台が廃車になり、二千万円以上の投資をしたパソコン等の事務機器が破損した。会社の資産がほぼ全滅したような被害を受けたこの年、同友会に入会している。

 

 

また今回は、スライドを使っているため白川氏やサンエクの仕事の内容もわかりやすく説明してくれた。サンエクはエクステリアの設計から施工までを行なっているが、業界の人でない限り具体的にイメージするのは難しい。CADを使って設計し、かなりリアルに3DCGに描き起こしたり、住宅の小規模なエントランスから大規模な施設の外構まで幅広く手掛けていることをスライドを使って紹介してくれたため、非常にわかりやすく、設計時点で描かれているグラフィックの精度の高さに驚きの声も上がっていた。

 

第二章ではエクステリア業界の現状と課題を話してくれた。職人の高齢化が著しいこと、天候次第で働けない日もあることから日当月給が当たり前という悪弊があること、社員として雇用しても定着率が低いこと等、建設業全体やエクステリア業界の問題、その中で自社がどのような状況であったかを赤裸々に話してくれた。

 

業界の常識に捉われない

 

第三章では、日当月給から固定給制に踏み切ったり、退職金制度を作ったり、社員が人生設計を描ける会社にしていくために、どのような取り組みを行なってきたのかを紹介してくれた。エクステリアの工事は天候が悪いと作業が出来ないこともあるため、仕事ができない日も給与を保証する固定給制は会社のリスクも大きいが、安心して働ける環境を作らなければ若い人を雇用することも出来ない。若い人を雇用して、育成していかなければ、いずれ地域から職人がいなくなってしまう。業界の中では誰もがずっと以前から分かっていることだったが、なかなか具体的な解決策を打てる会社が少ない中、白川氏は十年、二十年先を見据えて会社の体制を着実に変えてきた。入社後に職業訓練校の左官コースに二年間入校させる制度を作ったり、給与制度を国家公務員行政職俸給表二表に準拠させたり、様々な取り組みを行なってきたが、「全く業界を知らずにこの世界に入ってきたからこそ、業界の常識に捉われずに考え、実践することができた」と白川氏は語る。

 

職人が高齢で引退し、人が減ってくると残業も多くなる。しかし、売り上げを下げてでも大幅に残業を減らすことを決意し、実行してきた。残業で補うのではなく職人の技量向上に力を入れることで、生産性向上を実現し、結果として人が減って残業も少なくなっているのに、売り上げを上げることに成功した。

 

 

「職人のいない時代」に立ち向かう

 

最後に、サンエクが抱える課題と現在の取り組みについて紹介してくれた。「見て覚えろ」が当たり前、一人前になるには十年かかる、そんな常識を変えるため、職人育成のマニュアル化や「サンエクマスター」と名付けている評価制度を作ったり、幹部・中堅社員の育成のため、同友会が主催する「同友塾」を活用していくことも計画している。また、若者の採用活動や育成活動を積極的に実施し、雇用の状況が優良であると認められる中小企業に対して厚生労働省が認定を行う「ユースエール認定(若者雇用促進法に基づく認定)制度」の取得も目指している。

 

技術を継承していくために、地域の職人を育成したい

 

白川氏の経営は、常に社員、職人を中心に据えてきた会社づくりだ。技術を途絶えさせてはいけない、地域に職人を残さなければいけない。そのために、社員がいきいきと成長していける会社をつくらなければならない。この白川氏の言葉に嘘はない。しかし、それは美しいだけの綺麗事ではなく、「我が社は必ず生き残る」という強い信念を元に、業界の中でトップに躍り出るため練りに練られた戦略である。

 

 

 

報告を聞いた後、「何年先を見て、そのために今、何をしていますか?」をテーマにグループ討論を行なった。理容業界の人は、業界の平均年齢が高く、この宮崎に資格を取れる学校もなくなり、明らかに減少、縮小していく業界の中で模索していることを話してくれた。養豚業の人は採用に苦労しており、その要因を仕事や業界のイメージにあると考えている。夜間営業の飲食店の人は、低い定着率に悩んでいる。それぞれの業界の中で様々な課題があるが、誰もが自社や業界の課題を明確に捉え、悩みつつも何年か先を見据えて経営をしているという点は、5~10年前のグループ討論との違いを明確に感じることができた。人口減少、超高齢化社会、人手不足、AIやIoT、急速なグローバリゼーション… 今の時代の中で経営をしていくことの厳しさを誰もが感じている。そしてこれから訪れる激動の社会の中で、10年後と言わず、永続的に生き残る企業づくりをしていくために、企業家として何をしていくべきかを考え合うことができた例会だった。

 

文・構成・撮影:

竹原 英男
TNAソリューションデザイン株式会社 代表取締役
宮崎北支部・理事・増強本部長・産学官民連携部会MANGO会長


本資料は同友会の会員がゲストや非会員を訪問したり、入会や例会参加をお誘いする際に活用していただくために試験的に増強本部が発行しています。PDFファイルをダウンロードできますので、印刷する等としてご活用ください。

 

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