第17期「経営指針をつくる会」 第3講レポート

2019.5.7

 

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第17期「経営指針をつくる会」 第3講

21世紀型企業づくりの課題を掴む (1) 外部環境分析

 

2019年4月20日(土)、朝の9時半から夕方の6時まで7時間半を使って、第17期「経営指針をつくる会」の第3講が行われた。経営指針をつくる会とは、中小企業家同友会が作ることを推奨している経営指針書(経営理念、経営方針、事業計画等で構成される期ごとに作成する経営の指針となるもの)を作成するための講座であり、宮崎県中小企業家同友会(以下、同友会)の場合は丸一日の講座が6回、一泊二日の講座が2回の計8講で構成される。書類としての経営指針書を作成するノウハウを学ぶというものではなく、経営姿勢から見直していき、労働環境の改善、外部環境の分析等々の経営の基本から学び合い、自立型企業づくりを目指していくことを目的としている。

 

第3講は、「21世紀型企業づくりの課題を掴む(1)外部環境分析」と題して、経営環境の変化と、その環境に自身の事業がどのように影響を受けるのか、あるいはどのように対応していくのか。そして地域や社会の変化に伴い、自社に求められる社会的役割の変化について学び合う。

 

 

機器販売から建設業へ

 

まず最初に、実践報告として株式会社フクマツ社長、福松修一郎氏が「機器販売から建設業へ 業態転換の背景と社内の取り組み」と題して経営体験を話した。株式会社フクマツは、1969年に燃料販売を事業としてスタート。その後、当時の社長である父(現会長)が発売されたばかりの石油給湯器に目をつけ、主力商品になる。時代と共に太陽熱温水器や電気給湯機等に主力商品は移行していくが、当時の社長の気まぐれで導入した商品もいくつかあり、何度か失敗も重ねている。福松氏は気負った様子もなく、自然体で淡々と自社の歴史をありのまま話してくれるが、人柄が出ていてとても話が面白い。また、非常に勉強熱心で、真面目な性格が経営にも反映されている。楽観的に直感で勝負する父とは対照的に、常に不安を抱き、地道に勉強を続け、必要な対策を講じてきたのが福松氏であり、リフォーム業界の市場動向と自社の外部環境を分析し、時代の移り変わりと共に堅実な経営をしてきたという印象を受ける。現在では住宅設備のメンテナンスやリフォーム部門を強化しており、経営理念の中にある「生活環境の困ったを良かったに変える」を軸に事業拡大し、外壁塗装等の水回り以外のリフォームも手掛けている。住宅のメンテナンスやリフォームに躊躇しているお客様から、「フクマツさんがやってくれるならお願いしたい」と仕事を依頼されることが多いとのこと。まさに地域に頼りにされる企業であることを窺わせる。時代の先を読むこと、時代に対応すること、どちらも経営においては大切であるが、市場分析がほとんどなく直感的な先読みで失敗した先代と、慎重かつしっかり対応してきた福松氏の違いがよく理解できた話だった。

 

 

外部環境の変化を掴む

 

実践報告を受けて、各社の事業における市場の変化をテーマにグループ討論を行った。「経営指針をつくる会」では、企画運営をしている経営指針委員会の委員または過去に同講座を卒業した会員がサポーターとして参加するが、私のグループでは私を含めて受講生が二人、サポーターが五人という構成だった。まずはキャリアコンサルタントや産業カウンセラーの仕事を法人化している受講生が、業界をとりまく市場の変化について話をした。働く人の「心の問題」は年々表面化しており、近年の人手不足や高い離職率の問題も絡み、需要は明らかに高まっているが、現在は社内体制的に行政の委託事業を引き受けるだけで手一杯になり、事業として成長させていくための展望がまだ掴めていないことを話してくれた。

 

私も受講生の一人として自社の事業における市場の変化を話した。1993年にロサンゼルスで起業した時は、日本の企業に情報を提供するリサーチ会社として設立。当時、米国では情報スーパーハイウェイ構想が政府より発表されており、インターネットの普及を予見し、1996年に帰国して現在の会社を設立した。インターネットが普及すれば、米国という地理的優位性はなくなると判断したわけだが、当時の日本はまだビジネスにインターネットがほとんど取り入れられておらず、事業としては収益がほとんど見込めないという大誤算だった。2000年、ようやく日本政府の経済振興策としてインターネットを普及させるための「インターネット博覧会」が開催され、仕事が急激に増加した。また同時に、専門性が高いIT企業が増加し、様々な競合が現れては消えていく激動の時代を通過することになる。その後も市場変化においては、ブロードバンド、ブログ、Google、スマートフォン、SNS等々、様々なキーワードを挙げることができる。2014年、溢れかえる地方のWeb制作会社としての限界を感じ、ブランディングに特化したデザイン会社として事業ドメインを明確化する。さらに、内閣府が提唱する「Society 5.0」の人間中心社会の実現に向け、当社もAIを活用したライフサポート事業にも取り組んでいる。

 

様々な視点、視野、視座で

 

グループ討論では、このようにそれぞれの市場や社会の変化をどのように捉え、自社の経営の上でどのように対応していくべきかを考え合った。地域のお客様の声や反応といった肌で感じることができる周囲への視点、数字に明らかに見える経済情勢や国の政策のような大きな視点、またさらに大手企業の不祥事や事故、社会問題も含め、刻々と変化する外部環境をしっかり捉えていく必要性を確認し合った。

 

 

地域経済情勢をいかに分析すべきか

 

「経営指針をつくる会」の第3講では、実践報告に加え、宮崎大学地域資源創成学部の准教授、小山大介氏による二つの講義が行われた。小山准教授は、同友会において三ヶ月に一度行われている景況調査の分析とその解説も定期的に依頼しており、同友会の企業及び宮崎の地域経済については非常に精通している。講義1は、「宮崎県の中小企業をめぐる情勢の変化をつかむ ~地域経済情勢をいかに分析すべきか~」と題して様々な図表を示して、地域経済の多様性、外部経済環境の変化を読み取ることの重要性を説いた。小山氏は、「地域経済は生活の基盤であり、中小企業の事業活動は多くの場合、地域を土台としている。故に地域経済の実態を知らないことは、闇の中を無灯火で進むことと同じである」と訴える。そして生き残るのは「時代を創る企業」、「時代に対応する企業」、そして「時代の変化の中で『不変の価値』を見つける企業」であり、それ以外の企業は時代に翻弄されていくと言う。事業継続能力を持つには、市場分析、情勢分析が欠かせない。小山氏の講義は、非常に多くの図表、統計データを元に進んだが、ヒット商品とその時代の経済の変化等、今改めて振り返ると大いに納得できる面白いデータが多く、誰もが前のめりになって聞いていた。しかし、面白いとはとても言えない宮崎県の県内総生産の推移、深刻な人口減、人口動態、人口ピラミッドから見る超高齢化及び労働人口の危機的な減少等々を見せつけられると、どんな業種の経営者でも例外なく、外部経済環境を直視せざるをえない現実を実感したはずだ。

 

 

業界や地域の変化の中で我が社に求められること

 

この講義を受け、「業界や地域の変化の中で我が社に求められること・我が社がやっていくべきこと」をテーマに二度目のグループ討論を行った。サポーターの一人である建設業の人は、職人が極端に減る、もしくはいなくなる未来を見据え、十年前から人材育成、労働環境の整備に取り組み、業界の中で圧倒的な優位性を確保している現状を話してくれた。またそのような判断ができた要因を、全く別業界から参入したため、業界の常識に捉われず、社会や業界の課題を視点に考えることができたと語った。

ある意味においてはIT業界に分類される当社においては、次のように分析している。CUI(Character User Interface)が当たり前だったコンピュータが、GUI(Graphical User Interface)に移行することにより、視覚的にわかりやすいインターフェイスやマウス、タッチパネルのように直感的な操作が可能になり、専門家でなくても使えるようになったという軌跡を辿ったように、これからもより一層劇的にテクノロジー、デバイス、サービスは進化し、生活もビジネスもより人間中心設計に基づき便利になっていく。このような社会、つまり膨大な情報と複雑かつ急激な変化をもたらす社会の中で、経営者や生活者の思いや考えが、必ずしも求める成果に直結するほど都合の良い社会にはならないはずであり、経営者の思いを具現化し企業の価値を最大化する、または生活者の課題をICT技術と創造力で解決する、言うなれば「思考と行動を結ぶ」ことが、我が社の本質的な価値ではないかと考えている。

 

変化を掴むアンテナを

 

小山准教授による講義2は、「経営環境の変化を掴むアンテナを持とう」と題して、中小企業の競争力の源泉が地域経済の多様性にあること、そして社会や経済の在り方が変わる中での自社のポジションをどう掴むのかが重要であることを話した。外資系企業や大手企業が地域へ参入する際の障壁となるのは地域の多様性であり、逆に言えば中小企業の存在価値でもあること、これは非常に納得できる説明だ。大きな視点においては、縮小経済に突入している日本の経済において非常に重要なポイントであり、地域の中小企業にとっての直近の経営戦略上においても、勝機を得るために欠かせない視点だ。

 

付加価値構造の変化

 

また、設計・デザイン、それを受けての製造、組み立て、販売後のアフターサービスという商品やサービスの付加価値を示す流れの中で、グローバル化や情報化が進む現在において価値の重心が変わってきているという話は非常に興味深い。これを概念的に示している付加価値構造を表す曲線「スマイルカーブ」を元に解説してくれたが、これはあらゆる業界において既に顕著に表れている。事業展開、業態転換において、川上、川下を意識することは非常に重要だ。

 

こうして、実践報告、講義、グループ討論を重ね、「取り組むべき重要課題」と「変化を掴むための視点をここに置く」という二点について受講生がそれぞれ発表を行った。

 

同友会の学びは、全くと言ってよいほど「直接的」ではなく、回りくどい。答えを教えてくれるのはなく、答えを探すために必要な力をどうやって得るべきかを気づかせてくれるか、あるいは徹底的に自信を失うか…。だからこそ、真剣さを問われ、掴めた時に感動も大きく、実践力へと結びつく。講義、勉強会、と言う表現よりも、特訓と呼んだ方が適切だ。そして難しいのが、自主性を尊重し、強制力がない分、何を得るのか全ては自分次第だという点だ。軍隊のようにサバイバルを強いられる訓練と違い、何も掴まず経過する時間の中に身を置くこともでき、自身の覚悟や意気込み次第で、学びの質に雲泥の差が出る。そんな同友会の学びの究極の形が、「経営指針をつくる会」である。

 

講義でどんな知識を得られるのか。サポーターがどれほど素晴らしいサポート、アドバイスをしてくれるのか。そんな他力本願で何かを得られるほど、生ぬるい講座ではなく、自らの内にある経営者としての実力、覚悟に向き合う時間だと、私は感じている。


 

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文・構成・撮影:
竹原 英男
TNAソリューションデザイン株式会社 代表取締役
宮崎北支部・理事・増強本部長・産学官民連携部会MANGO会長

 

本資料は同友会の会員がゲストや非会員を訪問したり、入会や例会参加をお誘いする際に活用していただくために試験的に増強本部が発行しています。PDFファイルをダウンロードできますので、印刷する等としてご活用ください。