宮崎北支部中央地区例会レポート

2019.7.24

 

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宮崎県中小企業家同友会(以下、同友会)の宮崎北支部中央地区例会が2019年6月27日、吉野酒店ビル会議室にて開催された。座長は株式会社アドカムの桑山直幸氏であり、「中小企業の挑戦 × 金融機関の挑戦 ~私たちのリアルな事例~」と題して、高鍋信用金庫大工町支店支店長の河野裕二氏と次長の甲斐大貴氏、株式会社こだまの児玉健作氏(代表取締役)、そして私(TNAソリューションデザイン株式会社 代表取締役 竹原英男)がリレー形式で報告を行った(私は自身が報告すると同時に、話を進行するコーディネーターも兼ねた)。支部例会と違って少人数で気軽な雰囲気で行われることが多い地区例会だが、今回の参加人数は28名と多く、高鍋信用金庫の他支店からも支店長が参加し、支部例会と同様に報告、グループ討論、グループ発表、座長のまとめ等の一連の流れを行った。

 

 

 

金融機関との付き合いがない二社のリアルな経験談

 

今回の例会は、私と児玉氏のどちらも長い間、金融機関との付き合いがなく、事業を拡大するため高鍋信用金庫との取引を始めたばかりであることがきっかけになっており、経営指針書や事業計画、事業性評価等について参加者に知ってもらうと共に、その後の経営にどのような影響を及ぼしたのかを紹介する。株式会社こだまは今年5月に宮崎市の中心市街地に新店舗をオープンさせ、TNAソリューションデザイン株式会社は昨年2月に宮崎市役所前に新オフィスを開設している。

 

支援を断られた苦い経験

 

まずは児玉氏に自身の過去の経営状況と高鍋信用金庫との取引のきっかけを話してもらった。児玉氏は創業55年目となる木綿着物、太物の店「染織こだま」の二代目であり、2013年に代表取締役に就任している。経営が苦しい時、先代が銀行に相談したこともあったが、結局支援を断られたという苦い経験があり、以降は自己資金だけでの経営を続けてきた。児玉氏が代表に就任後、店舗の老朽化や新たな事業展開を考える上で、移転を検討するようになる。ちょうどその頃、同友会の例会で知り合った高鍋信用金庫の方が、例会後すぐに店を訪問してくれたことをきっかけに、融資の相談をするようになる。また、同じタイミングで同友会の「経営指針をつくる会」において経営指針書を作ったばかりということもあり、指針書に含まれる事業計画を元に話を進めることができたことを話してくれた。

 

 

投資をしない(挑戦をしない)経営が生んだ苦しみ

 

続いて私が自社の過去の経営状況を簡潔に紹介した。TNAソリューションデザイン株式会社は創業26年目になるが、株式会社こだまと同様にこれまで無借金経営を続けてきた。潤沢な資金があったからという理由ではなく、融資を受けない(投資をしない)経営を続けてきた結果であり、一時は赤字経営が続いていても気にすることもなかった。運転資金を銀行に相談したこともあったが、赤字続きの経営状況では相手にもしてもらえなかった。同友会に入会し、会社の成長を目指すようになり、経営状況が改善すると共に、専門家派遣や様々なセミナーの講師を務める機会も増え、業務においてもコンサルティング事業が増えてくる中で、より一層の成長、発展を目指すことが必要になってきた(他社に助言することを自社が行なっていない状態に違和感を感じ始めていた)。そのような状況にあった2017年、オフィス移転の必要性(旧オフィスの老朽化)と新規事業への挑戦が始まり、同友会の会員の紹介で高鍋信用金庫大工町支店の河野支店長と甲斐次長に相談することになった。私は「決算書を見せることが恥ずかしかった」という当時の心境も交えながら、具体的なエピソードを紹介した。

 

 

事業性評価融資とは

 

二者の話を受け、河野支店長と甲斐次長それぞれにその時の様子をどのように感じたのかを話していただいた。事業計画の妥当性、経営者の情熱、そしてそれらが伝わる経営指針書が存在していることの重要性等について紹介。また、本例会のテーマの一つでもある「事業性評価」についても、その背景から詳しく話していただいた。事業性評価融資とは、決算書の内容や保証、担保だけに必要以上に依存するのではなく、事業内容や成長可能性も評価して行う融資であり、従来の「財務内容の良さ」や「担保や保証人による保全の確保」しか見てこなかった金融機関の姿勢とよく対比される。その点、地域との共存共栄を第一に考える高鍋信用金庫では、事業性評価融資に積極的に取り組んでおり、何より「人と人との繋がり」を大事にしている。

 

 

漠然とした不安は明確な課題へ

 

その後も児玉氏には、融資を受けるまでの具体的な体験やエピソードを紹介していただいたが、リアルな体験は本人の口から聞くのと活字を読むのとでは伝わり方が異なり、また例会参加者だけに伝えるかなりシビアな内容もあるため、ここでの詳しい紹介は割愛する。私の経験を紹介すると、まず第一に、全く未知数の新規事業に取り組む際、共に考えていただき、自信を持って挑むことができたことが大きい。現在も進行中の新規事業は、経済産業省の「異分野連携新事業分野開拓計画(新連携計画)」に認定された。また、新オフィスに投資をすることで、社員のモチベーション、求人、取引先への印象等々、多大な影響が出ている。何より、事業計画の相談をする度に、「ワクワクします」と言ってくれる河野支店長や甲斐次長の言葉に何度も勇気付けられた。まさに、経営のパートナーになってくれているということを実感している。少々恥ずかしい話だが、「お金が足りない」や「今月のこの売上で大丈夫だろうか」等のような漠然とした長年の不安から解消されたことは、精神衛生上でも嬉しいことだ。もちろん現在においても経営課題はあるが、「漠然とした不安」は「明確な課題」へと完全に置き換わった。細かい事業計画を含む経営指針書を作成したことと、融資を受け計画的に事業を進めていることは、以前の場あたり的な経営状況とは全く異なっている。

 

地域との共存共栄

 

信用金庫が「地域との共存共栄」を掲げていることも、私にとっては重要な要素だった。金融機関とはいえ、互いにビジネスとしてリターンを求めつつリスクを最小限に抑えることは前提になる。しかし、以前の私は、銀行は一方的に(あるいは上位から)経営状況を評価し、返済の確実性だけで相手にするかどうかを判断するとしか受け止めていなかった(それが事実かどうかは銀行や担当者によると思うが)。河野支店長や甲斐次長との対話を重ねていく中で、互いに学び合おうとする姿勢や、共存共栄していくことを前提とした考えを感じたことが、今の関係性に至る大きな要素となっている。

 

リレー報告の後は、参加者全員でグループ討論を行った。各グループには、報告を行った河野支店長や甲斐次長をはじめ、高鍋信用金庫の支店長が加わっていたため、かなり率直な意見交換が行われた。グループでの討論内容は各グループを代表する発表者によって共有された。「一番苦しい時にメインバンクが手を引いた」、「思い切って近くに支店がある銀行にメインバンクを変えたら、その直後に支店がなくなった(本店内支店に移行した)」等の経験談や、「借り入れ予定がないと相談したらいけないのか」、「個人事業主でも相談していいのか」等のような疑問、「金融機関と経営者のさらなる相互理解が必要だ」、「地域のために互いに協力し合える関係性を模索したい」といった意見等が紹介された。

 

 

 

 

最後に座長の桑山氏によって、例会のまとめが発表された。「以前は融資を受けるためだけのずさんな経営計画書をつくった」という経験談を交えながら、金融機関にも「選ばれる企業」にしていくことや、共に経営計画を考えられるような信頼関係の構築が大切であることを述べて締めくくった。

 

例会づくりにおける反省点

 

今回は三者(4名)によるそれぞれの体験や意見を話してもらうリレー報告形式を採用した。パネルディスカッションやリレー報告は、それぞれの意見が大きく異なる、あるいは目指す方向性は同じであってもアプローチや体験が異なるといった場合に有効であるが、今回は児玉氏と私の過去の状況、融資を受けるまでの経緯が非常に似通っていたため、展開の難しさを感じながらの進行だった。討論を行うための題材としての情報は十分に伝えることができたはずだが、作り手としては、もう少し多角的な切り口で考え合うことができる場にする余地もあったのではないかと自問した。

 

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文・構成・撮影:
竹原 英男
TNAソリューションデザイン株式会社 代表取締役
宮崎北支部・理事・県増強本部長・組織強化連絡会リーダー
産学官民連携部会MANGO会長(兼担当理事)
広報委員会担当理事・青年部設立準備会担当理事

 

 

本資料は同友会の会員がゲストや非会員を訪問したり、入会や例会参加をお誘いする際に活用していただくために試験的に増強本部が発行しています。PDFファイルをダウンロードできますので、印刷する等としてご活用ください。